君にすべてを捧げよう
「ええ!! 無理!?」


携帯に向かって、思わず叫んだ。
電話の向こうの友達、つぐみが申し訳なさそうに続けた。


『ホントごめん、めぐる。子どもが風邪引いて寝込んじゃってさー。世話しないと』

「ああ、けんちゃん? 熱はあるの?」

『ちょっとね。咳も酷いから、病院連れていくつもり。それより、ほんとにごめんね』

「ううん、そういうことなら仕方ないよ」


子どもが病気なら、看病しなくちゃ。


「けんちゃん、早く治るといいね。お大事にね」

『うん。でも、当日に断ることになっちゃったけど、めぐるは大丈夫?』

「あー、まあどうにかなるよ。春奈とかに声かけてみるからさ」

『ならいいんだけど。じゃあ、また連絡するね』


ぷつんと通話を切って、あたしはため息をついた。


「なんだ、めぐる。誰か病気なのか?」


目の前で納豆をぐりぐりとかき混ぜていた蓮が訊いた。
ケータイの電話帳を呼び出しながらそれに答える。


「友達の子供が風邪ひいたみたい。で、今日あたしの店に予約入れてたんだけど、行けないって」

「ふうん。それならまた予約しなおしてもらえばいいんじゃないのか。
何でそんなに焦ってるんだ」


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