君にすべてを捧げよう
「ただの予約じゃなくて、お仕事参観日なんだよね」

「は? お仕事参観日ってなんだ」

「えーとね。あ、後で説明する。
もしもし、春奈? めぐるだけど――」


そうして電話をかけること、数人。
その全てに断られてしまった。


「うあ、どうしよう。やばいー」


最後の砦の一人に断られたあと、ケータイを投げ出して頭を抱えた。
そうだよね、平日の昼間に運良く暇な人なんて、そうそういないよね。

あー、どうしよう。オーナーに言って日にちを変更してもらうしかないのかな。


「なあ、お仕事参観日ってなんだ」


のんびりとした蓮の声に顔を上げる。
食後のお茶を啜っている顔と目があった。
ああそっか。説明するって言ったっけ、あたし。


「その名の通りだよ。スタッフの家族や親しい人を呼んで、仕事ぶりを見てもらうの。お客さまとして来てもらって、施術を受けてもらうわけ」


『お仕事参観日』
それは、スタッフが一年に一度、家族ないし親しい人をお客さまとして招待するという、オーナー発案のイベントだ。

①比較的お客さまの少ない平日の昼間に招待すること。
②招待主が全て施術を行うこと(アシの場合は自分の出来る範囲まで)。
③オーナーがそれに立ち会うこと。
④後日、招待客からの感想を含めた報告書を作成し、オーナーに提出すること。
※これをこなせない場合、ボーナスに響くかもね☆

上記の、ちょっぴりシビアな現実を含んだルールも存在している。


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