君にすべてを捧げよう
「で、あたしの両親はいないでしょ? だから毎年つぐみって子に頼んでたのね。専業主婦で、平日の昼間に時間作りやすいから。
そしたら当日の今になって断られちゃったってわけ」

「ふうん。それで焦ってたのか」

「そう。オーナーの予定も絡むから、簡単に延期なんてできないんだよね」

「そういうことか。ほら、とりあえず飲め」


はあ、とため息をついたわたしに、蓮が湯のみを差し出してくれた。


「あ、ありがと、う……」


お礼を言いかけて、はたと止まった。
目の前には、徹夜明けのぼさぼさ頭の蓮。
伸びきった髪が、瞳を覆い隠しているのを見ながら、口を開いた。


「蓮」

「ん?」

「蓮が来てくれない?」

「は?」


言って、すぐに無理だよねー、と肩を竦めた。
締め切りに追われてここに来てるのに、そんな暇あるわけがない。
それに、蓮はそういうのめんどくさがりそうだし。


「うそうそ。言ってみた」

「いいぞ」

「だけ。……え?」


ぎょっとして、顔をみた。


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