君にすべてを捧げよう
オーナーの顔に、疑問符がたくさん浮かぶ。

店内に、沈黙が訪れた。
のだったが、それをぶち破ったのは、隅っこにぼんやりと立っていた馬渡くんだった。


「すげええええええええ!! 俺観ましたよ! そのDVD!
超よかったっす!!」


やべえ!! と顔を真っ赤にした馬渡くんは、タイミング悪く物干し場から戻ってきた鏑木さんを捕まえて、蓮の職業を叫ぶように報告した。
報告なんてしないでよ、馬渡!!


「え。愛液注入シリーズって、あれ? ちろんの主演してたやつ?」


あっさり答えた鏑木さんに愕然とした。
鏑木さん、知ってるの!?
ていうか、蓮のそれって完全なるAVだったはずなのに。なのに!?


「うわあ、すごいなあ。俺、あれ全部観ましたよ」


しかも観たの!?


「オーナー、ほら、あれですよ。『危険な放課後』の愛水ちろんが出てる……」

「危険な放課後、深夜病棟……、ああ!! あれか! 結城(ゆうき)からまわってきたやつか!」


ええ!?
オーナーも食いつく!?

急にぱっと顔を輝かせたオーナーは、あたしを押しのけるようにして蓮の手をとった。


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