君にすべてを捧げよう
「なんだかやらしい想像してないですか?」


はあ、と大きくため息をついて、タオルを干す。
全く。ああいう話ばかりしてたから、思考回路まで毒されてしまうんだ。


「してますよ。だって、ハイネは坂城さんのこと好きでしょう?」


ガタンッ。
タオルを持っていた手が、思わず物干し竿を揺らしてしまった。
動揺を悟られないように必死に顔を作ってから、鏑木さんに顔を向けた。


「な、何を言ってるんですか? そんなことあるはずないでしょう」

「見てたら分かるって、そんなの。俺ってカンいいし。というより、ハイネって分かり易いし。
しかし、そっかー。彼氏いないのにはそういう理由があったんだね。坂城さんに片思いかー」

「違いますってば! 蓮のことなんて別になんとも!」


ふむふむ、と勝手に納得している鏑木さんに、つい大きな声を出してしまう。


「坂城さん、か。ハイネって年下とか好きなのかなって思ってたけど、まさかの年上か」

「ちょ。だから違いますって」

「あ、でも年上好きなら俺にもチャンスがあるかも。って、俺とタイプが違うもんなー」


悔しそうに言う鏑木さんを、むう、と睨んだ。
楽しんでる。これは絶対、あたしをからかって楽しんでる。

最近の鏑木さんは、あたしを暇つぶしの道具にしているフシがある。

自分では分かり易くしていた覚えはないのだけれど、一生の不覚。
まさか鏑木さんにバレてしまうなんて。


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