君にすべてを捧げよう
「だから、違いますってば! ていうか、鏑木さんと蓮って似てますよ」

「えー、どの辺が?」

「女の人にやさしいと言うか、ぶっちゃけ女たらしのところとか。蓮は生粋の女好きなんです」

「坂城さん、もう枯れてるって自分で言ってたよ? ちろんとも寝なかったって言うし」

「それは知りませんけど! でも、昔はそうだったんですよ」

「ふうん。ていうか、俺が女たらしとか酷い勘違いだよー。それと、話逸らそうとしてもダメだよ」


一瞬言葉に詰まる。気付いてたのか。


「ハイネ、坂城さんのこと好きなんでしょ?」

「い、いいえ! そんなことないですって」

「ふうーん」


笑いを含んだ声で言った鏑木さんが、灰皿を取ろうとしたのか戸棚に手を伸ばした。
と、横にあった液体洗剤を落としてしまう。
蓋が緩んでいたのか、床に洗剤が勢いよく撒かれてしまった。


「うわ」

「あー!」


しぶきは、鏑木さんのダメージジーンズまで跳ね上がっていた。


「あー……、やっちゃった。てか、なんで蓋開いてんの?」

「洗濯したのはえーと、馬渡くんか。こないだも蓋閉め忘れてたんですよねー」



馬渡くんはうっかりミスが多いのだ。


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