君にすべてを捧げよう
鏑木さんの纏う柑橘系の香りと、タバコの香りが鼻腔を擽る。
腰に回った手は酷く力強い。
ちう、とわざと音を立てて唇を啄んだ鏑木さんは、まつ毛の数を数えられそうな至近距離でにこりと笑った。


「こういうことされるから、気を付けた方がいいと思うよ」

「な……」

「じゃあ、着替えてきます」


体が解放される。

呆然として動けないあたしを置いて、鏑木さんはロッカールームに消えて行った。



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