君にすべてを捧げよう
と、門扉の方でけたたましいバイク音がした。
聞き覚えのあるその音は、多分馬渡くんの大型バイクのものだ。


「馬渡くん、着いたみたい」


縁側にあるサンダルを引っ掛けて、門を開けた。
そこには、馬渡くんのバイクと、鏑木さんの車が並んでいた。
メットを脱いだ馬渡くんが、「チーッス!」と頭を下げる。


「ハイネさんって、オジョーサマだったんすか!? すげえびっくりしました!」

「大きいだけだよ。それよりこっちに入れて。駐車場、中なの」

「はい!」


車内にいた鏑木さんと目が合うと、ひらりと手を振られた。それに、曖昧な笑みで返す。

やっぱり来たかー……。

もしかしたら、来ないかもしれない。と淡い期待を抱いていたのだけれど、願望で終わってしまったらしい。


「いらっしゃい、馬渡くん」


二人が駐車場に愛車を納め終わると、蓮が現れた。すっかり蓮に心酔してしまったらしい馬渡くんが、キラキラした顔で頭を下げる。


「お言葉に甘えて来ちゃいました! こんにちは!」

「はい、どーも。鏑木くんも、先日は色々ありがとうございました」

「いえ。こちらこそ、今日はお邪魔させていただきます」


にっこりと鏑木さんが笑う。


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