君にすべてを捧げよう
さら。さら。
髪が流れる音がする。
心地よい、優しい指が、あたしの髪を梳いている。

その感触は少しくすぐったくて、でも気持ちいい。

蓮、かな。
あたしにそんなことするの、蓮くらいだもん。

あ、でも違うかも。
前にされた時は痛いくらいに乱暴で、引き寄せられたから。

あれ……、じゃあこれ夢かな?
変な夢?

蓮が優しくこんなことするなんて、夢でしかありえないかも……。


「ん……、ん?」

「あ、起きた?」


眠りから意識を引き上げてみれば、目の前に鏑木さんの顔があった。
ソファの横に座り、あたしの髪に指を差し入れている。


「可愛い寝顔だからさー、見てた」

「な、なぁああ!?」


がば、と体を起こす。え、何で?
何で鏑木さんがここにいるんだっけ?
ここってあたしの家で、あれ?


「坂城さん寝ちゃってさー、馬渡くんは物色に夢中で、暇だからハイネと遊ぼうかなってこっちに来たら、寝てたんだよ」

「え? え?」


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