君にすべてを捧げよう
混乱する頭で周囲を見渡す。
観ていたはずの映画は、既にエンディングテロップが流れていた。


「あ、ね、寝ちゃったのか……」

「これさー、フランス映画だよね。甘々なラブロマンス。好きなの?」

「! べ、別にそんなんじゃないです!」


よだれ、垂れてなかっただろうか。
慌てて身づくろいをして、横の鏑木さんを見ると、にこにこと楽しそうにあたしを見ていた。


「あ、あの。起こしてくれてよかったんですけど」

「気持ちよさそうに寝てたし、いいかなと思って」

「よくないです!」


ていうか、近い! なんでさっきからこんなに距離を縮めてくるの!?


「え、えーとお茶でも入れましょうか! コーヒーですか!?」

「あ、うん。おねがいしまーす」


とにかく離れた方がいい。
キッチンに向かい、ヤカンを火にかける。
カップとソーサーを用意して、ええとコーヒー豆は……。


「あの、鏑木さん」

「なに?」

「なんでついてくるんですか?」


背後の気配を無視できず、振り返った。
何故か、キッチンまで鏑木さんがついてきたのだ。



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