君にすべてを捧げよう
我が家はダイニングキッチンになっており、部屋の中央にはダイニングテーブルが置かれている。
なのでここでお茶を飲んでもいいのだけど、さっきのリビングでも問題ないはずだ。


「向こうで待っててもらっていいんですけど」

「いや、何かハイネの新しい一面を見るのって楽しいなって」

「そういうからかいはいいですから、向こうに行ってて下さい。テレビも好きなの観てていいんで」

「いえいえ、お構いなく」


構うのはあたしの方なんですが。
気にするそぶりのない鏑木さんを横目で見て、そっとため息をついた。

本当に、この人は何を考えているんだろうか。

からかうにしては、ちょっと行きすぎのような気がするんだけど。


「ねえ、ハイネー」


コーヒーフィルターの用意をしていると、あたしの心境など全く無視したのんびりとした声がかかった。


「何ですか?」

「これって、ハイネの?」

「は? ……はぁぁぁぁぁ!? そ、そんなわけないでしょうが!」


満面の笑みで鏑木さんが指し示したのは、俗に言う『大人のオモチャ@女性版』だった。
テーブルの隅に、蓮の資料という名の卑猥物がまだ残っていたのだ。
これに気付かなかったとは、あたしも随分蓮に毒されているようだ。


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