君にすべてを捧げよう
「俺と付き合わない? ハイネのこと、好きになったっぽい」

「は……はぁ!? 鏑木さん、仕事関係はNGだって言ってたでしょ!」

「うん、そうなんだけど。本気だから仕方ないかなって」


ちう。鏑木さんの唇が、こめかみに降りた。そのまま、下へとゆっくり下がっていく。


「ちょ、鏑木さ……」


耳輪の上をぺろりと舐められて、体が震える。
小さく吐息が漏れた。


「あとはまあ、心境の変化かな。本当はもっと時間をかけて口説きたかったんだけど、あんな相手と二人きりで暮らしてると聞くと、焦るというか、嫌というか」

「……ふ……っ」


舌が耳の内側を這い、耳朶を舐める。と、柔らかく歯を立てられた。


「ね? 不毛な想いは捨ててさ、俺と付き合って?」

「か、鏑木さ……、は、離して」

「好きなんだ、ハイネが」


再び、耳朶に疼くような痛みを与えられてびくりとなる。


「おい、めぐる。馬渡く……」


冷水を浴びせられたかと思った。
熱を帯びた耳に入ってきたのは、蓮の声だった。

鏑木さんの腕を振り払い、ば、と振り返ると、バツの悪そうな顔をした蓮が立っていた。


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