君にすべてを捧げよう
「あ……蓮、これは、その!」

「あ、とこれは失礼。そういう関係とは知らなかったもので」


ひょい、と蓮は頭を下げた。


「あのな、めぐる。馬渡くん、帰らなくちゃいけなくなったって。彼女から連絡があったんだと」

「あ、そうなんですか。じゃあ、俺もお暇しようかな」


呆然としたあたしの横で、鏑木さんが動揺した様子もなく言う。


「あ、いや、お暇なら夕食までご一緒にどうですか? 鍋だし、人数が多い方がいい」


蓮も、同じ。
揺らぎも何もなく、ごく普通に鏑木さんを誘った。


「な……(何言ってんの!? 馬鹿蓮!)」


目で責めるが、蓮は気付かない。にこやかに、重ねて誘った。


「ぜひご一緒しましょう、ね?」


「じゃあ、お言葉に甘えます。ハイネの手料理も食いたいし」

「な……(何言ってんの!? 本当に!)」


鏑木さんまでもが、あたしを無視して誘いを受けた。
「じゃあとにかく馬渡くんを見送ってこよう」

「あ、俺も行きます」


立ち尽くしたあたしは、二人について行くことなどできなかった。


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