君にすべてを捧げよう
『不毛な想い』

鏑木さんの言うとおり、そうなのだろう。
あたしの想いは、実を結ぶことなどない。
とっくの昔に拒否された気持ちなど、大切に抱えていても仕方ないのかもしれない。

でも、切り捨てられない。

成長していくばかりの感情を殺す方法なんて、あたしは知らない。



もやもやした思いを抱えたまま、夕食の時間を迎えた。



どうにか仕事を片づけた蓮はひどく機嫌が良くて、鏑木さんにお酒を進めた。


「明日はお休みでしょう？　せっかくだから、泊まって行ってくださいよ。美味しい酒があるから、ぜひ」


最初は遠慮していた鏑木さんだったが、蓮の押しに負け、最終的には蓮秘蔵の日本酒を酌み交わしていた。


「いや、これ美味しいですね。口当たりが柔らかくて、水みたいだ」

「でしょう？　これを飲んで以来、下手に不味い酒は飲めないんですよ」


エノキダケをしゃくしゃくと噛みつつ、目の前で交わされる会話を聞く。
二人とも、完全に出来上がっている。
睡眠不足の蓮は当然としても、鏑木さんも随分飲んでいるのだ。
お酒が強い彼にしては珍しく、頬がほんのりと赤らんでいる。


全く、気楽で羨ましいわ……。


あたしはちびりちびりと梅酒をロックで飲んでいるのだけれど、全く酔えそうにない。
食欲もあまりなく、それもこれも全てこの二人のせいなのだけれど、それをこれっぽっちも感付いてない二人に少しの苛立ちを覚える。


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