君にすべてを捧げよう
鍋の中がおじやに変わり、それもなくなった頃には二人ともへろへろの腰砕けになっていた。


「鏑木さん、客間に布団敷くんで、それまでリビングのソファにいて下さい」

「えー、自分でやるよー」

「いいから。さあ、行った行った」


鏑木さんがソファに寝そべるのを確認して、次はテーブルに突っ伏した蓮の方へ向かった。


「蓮。起きて」

「んー……」

「蓮。ほら」


軽く揺さぶると、蓮はのそりと立ち上がった。
頭に手を当て、ふー、とため息をつく。冷たい水を入れたコップを差し出すと一息に飲んだ。


「美味い。これ、酒か?」

「水だよ。ほら、部屋戻って寝なよ」

「ん」


ふらりと歩き出す。よろけた蓮はガシャンとドアにぶつかってしまった。


「あーもう、飲みすぎなんだよ、蓮は。ほら、行くよ」


ふらつく蓮の体を支えるように脇に入る。
大きな体を支えるのは酷く困難だが、怪我されたり、廊下で寝られることを考えれば運ばざるを得ない。
よたよたとふらつきながら、離れへと運んだ。


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