君にすべてを捧げよう
「れ、蓮……」

「ん……」


お酒混じりの熱い吐息がかかる。
蓮の重みを感じる。

自分の心拍数が急上昇していくのが分かった。

どうしよう。
こんなこと、想定していなかった。


体が熱くなる。
もそりと手を動かせば、温かな蓮の体が当たり前にそこにあった。


「蓮……」


もぞもぞと動いて、顔を横に向ける。こちらを向いた蓮の寝顔。
オレンジ色の灯りに照らされて、男の人にしては長い睫がふるりと揺れた。



ああ。
あたし、この人が好きだ。


顔を見るだけで、こんなにも心臓が跳ねあがる。
喉の奥がきゅううと熱くなって、泣き出しそうになる。
痛感する。
好きだ、蓮が。


思わず、抱きしめそうになって。
手を動かした、瞬間だった。


「美恵(みえ)……」


蓮が呼んだ名に、びくんと震えた。沸騰しかけた血液が、一気に冷めていく。
蓮はまだ、忘れてない。五年前のことを……。


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