奇跡
言われた通り、二階にあがると



一番端の椅子にちょこんと腰掛けた。



店長は30歳ぐらいの髭が似合う熊みたいな人。



海外の美容室への留学経験や、美容学校の講師として呼ばれたりと



中々有名な人らしい。



『サリーちゃんお待たせ〜!どんなんがいい?あんまり凝ったやつは時間的に無理やけど…』



『ん〜…お任せでっ!!』



『じゃあアップな!可愛くしたげるわ笑』



『お願いします笑』



店長はすごく気さくな人で、いい店に就職出来て良かったなぁと



何だか嬉しくなった。






…すごい…



10分か15分しか経っていないのに



さっきまでボサボサだった髪は綺麗にまとめられて



毛先はゆるいカーブを描いている。



きっと



この時が



あたしが“美容師”に興味を持つ



第一歩だったと思う。



これから先



理由はまだまだ増えて行くんだけれど。
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