いきごえ
めづる姫君
「ほら、こっちにおいで」
日照りの中
短髪の髪が熱を帯びている
辺りから蝉の鳴くのが聞こえてきそうだ
手を伸ばした短髪の君は虚しくも空を掴み
それを見ていたからすはあくびをした
「おい、何してんだよ?」
あきれ気味に見上げる男は短髪の君の足元を指差した
「え?何って黒が…」
そう言いながら足元に目線を下げると短髪の君は登っていた塀の上から転がり落ちる
「痛っったぃ!
早く言ってよ!」
「気付かないお前が悪いんだよ。な、黒?」
男が呼ぶと、からすが一声鳴いた