瞬きさえも忘れていた。
「どうしたんですか?」


「花火も綺麗だけど、鳴瀬さんの方が何百倍も綺麗」


古臭いセリフを、笑いを必死に堪えながら言う岩本さんに、ちょっとだけ腹が立った。

幸せムードが台無しだ。



「じゃあ岩本さんは、ずーっと私を見てればいいんじゃないですか?」

つい、意地悪なことを言ってしまい、すぐに後悔。



岩本さんが何も言い返して来ないから、恐る恐る隣を盗み見れば、何事も無かったかのようにペットボトルのお茶を飲んでいた。


拍子抜けして、思わずまじまじと見入った。

そんな私に気付いた彼は、口から外したそれをこちらに差し出し、至って真顔で「いる?」なんて尋ねる。


小さく首を左右に振って断れば、不思議そうに私を見詰めながら、ペットボトルの蓋を閉めた。



「あの、」


「ん?」


「さっきの、嘘ですから」


「『さっきの』?」

そう言ってほんの少し考えているような間を置いて、「何だっけ?」とバツが悪そうに苦笑する。


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