瞬きさえも忘れていた。


そうして迎えた月曜日。

お弁当持参で出勤したものの、どうしても岩本さんに一目会いたくて。



お昼休み、営業部の女子二人――三年先輩の吉田さんと同期の樽井さん――にお願いして、一緒に食堂へ向かった。


お弁当も忘れずに持って行く。できることなら無駄なお金は使いたくないし。



二人は列の最後尾に並んだけど、お弁当持ちの私は空いている席へと直行し、そこに腰掛けて一人で待った。



食堂内に視線を走らせて岩本さんの姿を探したけど見付からなくて、もしかして今日お休みかな? なんて思っていたら、「梨乃ちゃん」と誰かに呼ばれた。


ストン、と。机のすぐ横に降りて来た顔を目にして、驚きと動揺で鼓動が激しくなった。



重ねた両前腕を机の上に引っ掛けてしゃがんだその人。『腕の上に顔だけ』の状態で私を見上げている。


薄い愛想笑いを浮かべ、けれど目は笑っていなかった。



甲本さん、

怒っている……?


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