瞬きさえも忘れていた。
「わかります。私もその『漏れなく』の一人ってことですよね? わかってます。勘違いなんかしてませんから、大丈夫です」

できるだけ角が立たないような言い回しをしたつもりだった。



「ごめんね。気ぃ悪くしないでね。それで……梨乃ちゃん、甲本くんとは?」


ヤったか、ヤっていないか。吉田さんはそこが一番知りたいんだとようやく気付いた。



「ラブホに誘われましたけど、断りました」

きっぱりと否定した。


至極当たり前のことだと思っていたのに、吉田さんも、その背後の樽井さんさえも驚いたように目を見張る。


どうして?



「すごっ! あの甲本くんを突っぱねるって……。梨乃ちゃん凄い」


その『凄い』は感嘆なのか非難なのか、吉田さんの表情からは驚きしか読み取れず、どちらかわからない。



どう返せばいいのだろうと戸惑っていると、そんなのはお構いなしに吉田さんは続けた。


「甲本くんって、人懐っこい感じで話しやすいし、ほら、かなりのイケメンじゃない? だからみんな断らないの。あ、でも――

断れないってのもあるかも……」


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