瞬きさえも忘れていた。
「ごめんなさい。あの、言ってることが良くわからないんですけど」

本当に何が何だかわからなくて。


混乱し過ぎて真っ白になってしまった頭の中に、ふと、岩本さんの言葉が蘇る。



『甲本、百発百中ならず。ざまぁみろだな』


そう言って、悪戯に成功した悪ガキみたいに嬉しそうに笑った岩本さん。



ああ、そういうことか。



「そだね、ごめん」

吉田さんはまた、困ったような顔をして苦笑した。



「何から話せばいいんだろう。もっと早く梨乃ちゃんに話しとけば良かったんだけど……」


本当に困っているみたいだから、

「じゃあ、『断れない』ってのはどういう意味ですか?」

一番気になった部分を私の方から尋ねてみた。



「あっうん、それは……甲本くん、中鉄(ちゅうてつ)の社長の次男で」


中鉄って言ったら、親会社の中央製鉄のことだよね。


だからかぁ。

『断れない』っていうより、誰も逆らえないんだ。


そんなことをぼんやり思った。


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