瞬きさえも忘れていた。
軍手をはめた手でヘルメットをほんの少し持ち上げ、首元で結んであるタオルの先っぽで額の汗を拭いながら、

「暇なの?」

と。至極冷ややかに、また彼は問う。



全く無駄のない彼の一言一句は、一々私の心にチクリと刺さる。なのに、嫌じゃないし不快じゃないことが不思議で仕方なかった。



「暇、じゃないです。ほんとは工場長を探しに来ました」

これだけ冷たくされると、もうただ笑うしかなくて。ヘラヘラと無駄に愛想笑いを浮かべる私は、きっと傍から見たらものすごく間抜けだ。



「ああ、多分、ボイラー」

彼はふいっと私から視線を逸らして言った。すごく素っ気ないけど、それでもちゃんと教えてくれたことが嬉しかった。



「はい、ありがとうございます」

取り敢えずはお礼を口にし、けれどもう少し、もう少しだけ何か話がしたい、なんておこがましいことを願ってしまう。


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