瞬きさえも忘れていた。
「答え……られないんですか?」

咽び泣きながら、途切れ途切れに口にした言葉。


責めるつもりも問い詰めるつもりもなかったけれど、岩本さんにはそう聞こえたかもしれない。



だけど岩本さんは腹を立てる様子もなく、至って穏やかなまま、

「その答えは、どっちでも梨乃が救われない」

言って、困ったように苦笑した。



「救われなくてもいい。今更、救われたいなんて思わない。だから答えてください。お願い、答えて……」

岩本さんの袖にしがみ付いて、泣きながら訴えた。



途端、私の身体がぎゅうっと締め付けられる。

岩本さんの胸に、腕に、体温に、全身を包まれて。


すごく久し振りに感じたけど、私の身体はこの心地よい温もりを鮮明に覚えていた。



大声で泣き叫ぶ私の頭を、岩本さんの大きくて厚みのある手がそっと撫でる。



泣き声がしゃっくりに変わるのを待って、岩本さんはようやく口を開いた。


「梨乃、このままで聞いて」


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