瞬きさえも忘れていた。
「うん」

小さく頷きながら口にした返事は、岩本さんの胸に吸い込まれてしまった。



岩本さんは、ゆっくり丁寧に話し始める。


それは私への最後のメッセージ。

何となくそんな気がして、一言も、一文字も聞き漏らさないように、全神経を聴覚に集中させた。



「いつも凛としてて、どんな時でも笑顔で。そんな梨乃をすごく綺麗だと思った。

でも誰にでも笑いかけるのが気に入らなかった。甲本が『一発で落としてやる』とか吹いてて、ボコしてやろうかと思った。

想いを包み隠さずストレートにぶつけてくる素直なところが、たまにムカついたりもしたけど可愛いと思った。

梨乃は……俺の理想そのものだった。

だから陽奈乃の代わりなんかじゃない」


岩本さんは一気に喋って、ここで一息吐く。


胸が押し潰されそうなぐらいに苦しいのは、ぎゅうっと締め付けられている圧のせいか。

それとも他の何か……。



岩本さんが自分の気持ちをこんなにも沢山語るのは初めてで。


だから、これが最後だという予感は確信に変わった。


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