瞬きさえも忘れていた。
岩本さんの胸を両手で押し離して、いつも飽きることなく見詰めていた美麗な顔を見上げた。


その濡れた瞳が、不安げに揺れている。



「わかりました。岩本さんのことは諦めます」


きっぱりと伝えたけど、それは中途半端な決意だった。



「でも、この恋は諦めたくないです。私はこの愛を――


気が済むまで貫き通します」



岩本さんを困らせたっていい。重荷になったっていい。


バカな女だって笑われても構わない。

我儘で自己中な女だって嫌われても構わない。



嘘は吐きたくない。

綺麗ごとなんかじゃ、私のこの想いは語れない。



「それじゃあ梨乃が辛いだろ? 梨乃だけが辛いだろ? そんなのダメだ、絶対ダメだ。そんなの、俺が許さない。そんなの迷惑なだけだから止めて?」


怒ったようなきつい口調で言った岩本さん。けれど、その顔はみるみる苦痛に歪んでいく。


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