瞬きさえも忘れていた。
え? な、な、なに?


訳がわからず、頭の中が真っ白になってしまった。



でも何故か吉田さんまであたふたと焦燥しきって、

「あ、岩本くん、彼女、新入社員の鳴瀬梨乃(なるせりの)ちゃん。よろしくね」

誰も頼んでいないのに、私のことを突然、紹介なんかしちゃって。



よろしくお願いします、とびくびくしながら言って、仕方がないから軽く頭を下げた。



「もう夏だけど」

岩本さんは至って無表情のまま、ボソリと言う。



だから、何?


女子三人、揃って小首を傾げた。頭の中には大きなクエスチョンマークが一つ。



「まだ『新入社員』?」

そう言って彼は、薄っすら意地悪な笑みを浮かべた。



ああ、そういうこと。


納得はするけど、返す言葉を誰も見付けられず、重苦しい沈黙がその場を包む。


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