瞬きさえも忘れていた。
外の空気を吸った途端、息も詰まるような圧迫感から解放された。
けれど今度は胸がぎゅうぎゅう締め付けられて、また息苦しさを覚えた。
酷く疲弊した心が、悲鳴を上げている。
だらだらと勢いよく頬を伝う涙が邪魔くさくて、ちゃんと前を向いて歩いているのに、視界が霞んでしまって良く見えない。
「待って! 待って、梨乃ちゃん」
背後から必死に私の名を呼ぶ声。
まさか、という想いで振り返れば、ドレスの裾を両手でたくし上げ、こちらに小走りして来る陽奈乃さんが目に留まった。
慌てて頬を拭う私の目の前まで来ると、陽奈乃さんは肩を大きく上下させながら呼吸を整えた。
そして、
「ほんとは……私を責めに来たんでしょ?」
縋るような瞳で私を真っ直ぐ見詰めながら、震える声で問う。
そんなつもり、更々なかった。
きっぱり否定してやりたいけど、花束を頭上に振りかざした時のあの醜い感情は、言葉で巧く説明できそうにない。
弁明なんかできない。
答えられずに口を閉ざしたまま、ただ彼女の熱い視線を受け止めていた。
「大好きな人の傍に居るのに、その大好きな人はいつも、私じゃない他の誰かのことを想ってる。それがどんなに惨めか、あなたにわかる?」
けれど今度は胸がぎゅうぎゅう締め付けられて、また息苦しさを覚えた。
酷く疲弊した心が、悲鳴を上げている。
だらだらと勢いよく頬を伝う涙が邪魔くさくて、ちゃんと前を向いて歩いているのに、視界が霞んでしまって良く見えない。
「待って! 待って、梨乃ちゃん」
背後から必死に私の名を呼ぶ声。
まさか、という想いで振り返れば、ドレスの裾を両手でたくし上げ、こちらに小走りして来る陽奈乃さんが目に留まった。
慌てて頬を拭う私の目の前まで来ると、陽奈乃さんは肩を大きく上下させながら呼吸を整えた。
そして、
「ほんとは……私を責めに来たんでしょ?」
縋るような瞳で私を真っ直ぐ見詰めながら、震える声で問う。
そんなつもり、更々なかった。
きっぱり否定してやりたいけど、花束を頭上に振りかざした時のあの醜い感情は、言葉で巧く説明できそうにない。
弁明なんかできない。
答えられずに口を閉ざしたまま、ただ彼女の熱い視線を受け止めていた。
「大好きな人の傍に居るのに、その大好きな人はいつも、私じゃない他の誰かのことを想ってる。それがどんなに惨めか、あなたにわかる?」