瞬きさえも忘れていた。
瞬きさえも忘れていた。
――――三年後。
填島鉄線株式会社を退社したのが二年前。
『石の上にも三年』
その言葉通り、きっちり三年間勤めた。辞表も二ヶ月前に提出し、後腐れなく去ることができた。
未練や名残惜しさなんか、微塵も感じなかった。
お世話になったパートの奥様たちや吉田さん、それに樽井さん。
彼女たちとは今でも時々連絡を取って、ランチに行ったり飲み会したり。だから、ちっとも寂しくなんかない。
ファミレスに転職した私は、今日も怒涛のランチタイムを気力と営業スマイルでやり過ごし、ほっと一息吐いた頃には、退社時間。
夕方からの学生アルバイトが出勤すれば、簡単な引継ぎを済ませて、即、帰らせてもらえる。
いい職場だと思う。
ここでは、どんなに笑顔を振りまいたって、『誰でもいーから誘ってって顔してる』なんて言われない。
ここなら、いつも笑顔でいられる。