瞬きさえも忘れていた。
そして何より、腕を見るのも初めてで、その逞しさにドキリとした。

だっていつも、長袖の作業着を着ているから。



岩本さんがじわじわと近づいて来て焦る。



「わかりました。駐車場で待ってます」

甲本さんへと目線を戻し、早口で答えた。



「うん。楽しみだねー」

なんて言いながら歩き出した甲本さんは、私に向かって手を振って、事務所の中へと消えた。




最悪なことに。

門を出るタイミングが岩本さんと一緒になってしまった。そして更に方向まで一緒。


並んで歩くのも気まずいので、足の動きをわざとらしいぐらいゆっくりにしてみる。

けれど、何故だか岩本さんもそれに合わせてゆっくり歩くから、結局並んで歩くことになっているというこの状況。一体、何がどうなっているのか……。



嫌がらせ? と本気で勘ぐった。


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