瞬きさえも忘れていた。
「どこでもいいから降ろしてください。駅まで歩きますから」
ここは職場からそんなに遠くないはず。いつもより15分ぐらい余分に歩けば、きっと駅に着く。
「こっからだと結構あるよ? だし、家まで送るって、もちろん」
こっちは至って本気なのに、何故だか甲本さんはおかしそうに笑うばっかりで、ちっとも取り合ってくれなかった。
そして、
「お腹も膨れたし――
ちょっと休まない?」
そう言って一瞬だけ艶やかに私を流し見て、ハンドルを左に切った。
そうして背の高い建物の中に車を乗り入れた。
帰してもらうことに必死で、建物全体をはっきりとは見ていなかったけど、そこは紛れもなくラブホテルの駐車場だった。
そんなの、いくらバカな私でもわかる。
「何考えてんですか? こんな、会社のすぐ近く……。ちがっ、そういう問題じゃなくて……」
焦燥しきって、あたふたと訳のわからないことを口走った。
ここは職場からそんなに遠くないはず。いつもより15分ぐらい余分に歩けば、きっと駅に着く。
「こっからだと結構あるよ? だし、家まで送るって、もちろん」
こっちは至って本気なのに、何故だか甲本さんはおかしそうに笑うばっかりで、ちっとも取り合ってくれなかった。
そして、
「お腹も膨れたし――
ちょっと休まない?」
そう言って一瞬だけ艶やかに私を流し見て、ハンドルを左に切った。
そうして背の高い建物の中に車を乗り入れた。
帰してもらうことに必死で、建物全体をはっきりとは見ていなかったけど、そこは紛れもなくラブホテルの駐車場だった。
そんなの、いくらバカな私でもわかる。
「何考えてんですか? こんな、会社のすぐ近く……。ちがっ、そういう問題じゃなくて……」
焦燥しきって、あたふたと訳のわからないことを口走った。