瞬きさえも忘れていた。
余りにも理不尽な責任転嫁に、唖然として言葉を失った。


身体中の血が、一気に頭に集まって来たみたい。有り得ないぐらいに熱い。



ぼんやりした思考の中、岩本さんの言葉がまた、鈍い響きとなって木霊する。


『あんた、簡単にヤらせてくれそう――

――って、思わせてる』



岩本さんが正しかった。あれはやっぱり、忠告だった。


私がいけなかったんだ。



「私の態度が勘違いさせたのなら、ごめんなさい。今後はこういうことがないよう、気を付けます」


とにかく今は、自分が悪かったと認めて、無事解放して貰うことが先決だと思った。

悔しいけど、仕方がない。


だって、無理矢理ホテルの中へ連れ込まれでもしたら大変だ。



「梨乃ちゃん、ひっでぇなぁ。俺、かなり傷付いたし」


甲本さんはあくまで、被害者に成りきるつもりだ。狡い……。


< 60 / 255 >

この作品をシェア

pagetop