瞬きさえも忘れていた。
残酷なほどに優しい人
5分ぐらい歩いたら会社に着いた。
多分今、午後9時頃だ。
わざわざ鞄からスマホを取り出して、時間を確認するのも面倒で。
そろそろ夜勤の人たちが来るころかな、なんて思いながら、弱々しい外灯に照らされ、暗闇の中ぼんやり浮かび上がる工場に何気なく視線をやりつつ、足早に通り過ぎた。
信号を2つ渡った角に、コンビニがある。
ガラス越しに、雑誌を立ち読みしている男性が数人。
極、ありふれた光景なのだけど、そこから漏れる光がやけに眩しく感じて、その明るさから逃げるように俯いた。
けれど、どういう訳だか立ち読みしている男性のうち一人が、通り過ぎる私を凝視していて。
気付かないふりをしてやり過ごしたいけど、視界の端に嫌でも入って来るから困る。