瞬きさえも忘れていた。
重なった想い
キュッとタイヤを軋ませ自転車が停止する。
その反動で身体が前のめりになった私は、咄嗟にぎゅっと、岩本さんの背中にしがみついた。
「着きました」
言いながら、岩本さんは私を振り返って見下ろした。
慌てて荷台から降りれば、目の前には自転車置き場。綺麗に並んでいる自転車の中には、子どもサイズのものもあった。
ここには、若い独身者だけじゃなく、所帯持ちも住んでいるんだ。
岩本さんもふわりと降り立ち、空いているスペースに自転車をとめた。
自転車置き場の向こう側の、三階建て木造アパートを見上げていたら、
「俺の部屋はこの二階。で、駐車場はこの裏」
そう言って、スッと私の手をすくい取ると、岩本さんは歩き出した。
そう言えば、コンビニを出る時も岩本さんは私の手を引いてくれた。
でもこれって――
手を繋いでいるのでは?