瞬きさえも忘れていた。
嘘でもいいのに
「帯、崩れてないですか?」
身を翻して岩本さんに背を向け、そうした状態で顔だけ振り返って尋ねた。
「大丈夫だけど。てかさ、それ何回聞くの?」
呆れたように溜息を吐きながら聞き返してきた岩本さんに、
「何回とか、回数は決めてないけど、定期的に?」
曖昧な疑問形で答えた。
「まじか……。ちょっとウンザリなんすけど。てか、そんなに気になるんなら、もう取っちゃえば?」
そんな、わざと出来もしないことを言う岩本さんは、すごく意地悪だ。
市役所の駐車場に車を停めて、そこから臨時シャトルバスに乗って会場の河川敷までやって来た。
バスの中はとんでもなく混み合っていた。
それは想定内だったけど、苦労して結んだ帯がぺしゃんこに潰れているのを背中で感じながら、ひたすら揺られて来たんだから。
バスを降りてすぐ確かめて当然じゃない。