瞬きさえも忘れていた。
本当に、正直なだけですか?


正面に向き直った横顔を見詰めながら、そんなことをぼんやり思った。



理由もなく不安で、理由もなく切ないのはきっと、

岩本さんのことが好きだからだ。






巾着から小さく折り畳んだレジャーシートを取り出して広げると、岩本さんが、

「四次元ポケットみたい」

なんて言って笑った。


ちびっ子に大人気のキャラと岩本さんが、どうしても結びつかなくて、それが可笑しくて私の顔も自然と綻んだ。



シートの上に並んで腰を下ろし、通りがかった屋台で買って来たものを食べながら、花火が始まるのを待った。



「はい」

私のタコ焼きを楊枝で刺して、丸ごと一個、岩本さんの口元へ持っていく。


躊躇いながらもそれにかぶりついて、でもすぐ自分の手のひらの上に落として、

「あちっ」

と悲痛な声を短く漏らした。


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