瞬きさえも忘れていた。




開始のアナウンスが流れ、無意識的に姿勢を正し、まだ何もない真っ黒な空を見上げた。



ダン――

低くて鈍い爆音が静寂を破る。身体の芯を叩かれたような感覚に、胸が激しくざわめいた。


続いてヒューっという細い音と共に、暗闇の中、光の筋が天へと昇っていく。



そして、夜空一杯に大きな花が咲いた。弾けて散った無数の光が、まるで星屑のようにチラチラと瞬きながら川の水面に舞い降りる。



「きれい……」

溜息のようにこぼせば、「ん」と隣から小さな頷きが聞こえた。



大好きな人と、

同じ瞬間に、同じ場所で、同じものを見て、同じことを感じる。


正にこれ、至福の時だ。



咲き乱れる色とりどりの光に見とれながら、そんな幸福感に浸っていると、

「あっ……」

と、何かを思い出したらしい岩本さんが声を漏らす。


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