【短編】紙ヒコーキ
な、なに?!
「懍、ちょっと来て…」
北村先輩にいつもの無邪気な笑顔はなく、真剣な顔。
なんだかめったに見ない表情だから少し怖いくらい…。
あたしは「彼女がいる」という事実を、北村先輩から聞かされるのかと思った。
だから、それが怖くて怖くて
力いっぱい首を横に振った。
「……ごめん」
カララ……
北村先輩はそう言って教室のドアを閉めて帰っていった。
先輩は何であたしを追ってきたの?
彼女とキスなんて
付き合ってたら当たり前…
「ごめん」って何?
先輩がキスしてたという事実を理解したくなかった。
でもそのあとの先輩の行動は理解しようとしても、できなかった。
北村先輩……
ほんとにあの人は彼女ですか?
今さら先輩に呼ばれて断ったことを後悔する。