星の輝く夜空の下で
お母さんと知らない女性の話に同席する事になった夏芽
雰囲気は良いとは言えない中
話を切り出したのはお母さんだった
「何しにいらしたんですか?」
「今年の4月に娘が亡くなりました」
「それは残念な事ですけど、わざわざうちまで来て言う事でしょうか」
「いえ、本当は娘とここに来るつもりでした。娘と一緒にケジメをつけるつもりでした」
「なんの?」
「事故で夏芽ちゃんを傷つけてしまった事」
夏芽は11年前の交通事故の事だとすぐに分かった
「そんな事して何になるんですか。今さら話をぶり返すなんておかしいですよね」
「夏芽ちゃんが元気で安心しました」
「何が元気で安心しましたよ!」
お母さんは声を荒げた
「身体は元気かもしれないけど、それ以上に精神的に辛い思いをしてるんです!11年取れない傷が心にあるんです!」
「お母さんどうしたの?やめなよ」
お母さんがこんな声を荒げるのはいつぶりだろうか
「うちの娘は11年間眠ったままでした。でも死ぬ直前に目を覚ましたんです。その時、夏芽ちゃんは無事か一番に聞いてきたんです」
「え…」
「『お母さん、あの女の子は無事?生きてる?傷を残してない?』そう聞かれてすぐに答えられませんでした。だから確認しに来たんです。元気だったって娘に伝えたいんです」
「…」
お母さんも女性も涙がこぼれた
お母さんも分かってる
娘が死んだ苦しみ
だから強く言い返せない
夏芽は口を開いた
「あの、今度お姉さんに会いに行っていいですか?」
「…」
「夏芽」
「あたし、交通事故がきっかけで幽霊が見えるようになったんです」
「幽霊…?」
「はい。その代わりだと思うんですが、車やガラスを見てもトラウマは全く無かったんです。もちろんそのせいで人間関係がうまくいかなくて辛い思いもしました。でもトラウマでうまく進まない毎日よりかはずっと楽しかったと思うんです。だからお姉さんに大丈夫だよって言いたいです」
「…」
「あわよくば近くにいたら話もしたい」
「夏芽…」
女性は驚いた顔で話を聞いていた
聞き終わって優しく笑った
「ありがとう…。素晴らしい娘さんですね」
「いいえ、そちらの娘さんも」
こうして和やかに終わった