星の輝く夜空の下で
夏芽は部屋のベッドで仰向けになっていた
たまにため息をつく
「夏芽」
窓の外から声がした
朱子だ
「朱子?なんでここに…」
「ある人からの願い事だからかな」
「願い事って誰の…」
「本当はさ、記憶のない幽霊みたいに何も言わずに消えるつもりだったんだけど」
朱子は窓を越えて夏芽のベッドにやって来た
「何でよ。さよならくらいいってくれたってよかったじゃん」
夏芽は顔を背けていじけた
「あたしがまた夏芽に会いたくなっちゃうから」
「いいじゃん会いに来れば」
「いつまでも幽霊にしがみついてたら駄目でしょ?夏芽だって分かってた事でしょ?」
「そうだけど…」
「あたしもいつまでも夏芽にしがみついてちゃいけないよなって思ったの」
夏芽は目を見開いて朱子を見た
「それって…成仏するってこと?」
「そうなるね。意味もなく何年も地上にいたけど、そろそろ天国いこうかなって」
「何で急に」
「なんとなく」
「なんとなくって」
「ごめん」
これ以上何も言えないって言ってるように聞こえた
「もう春実ちゃんいるし大丈夫でしょ?」
「それとこれと話は別…」
「さよなら」
朱子は窓をすり抜けて飛んで行った
夏芽には微かに泣いているように見えた
「朱子!!」
朱子は遠くへ消えた
空が雲に覆われて黒い
今にも雨が降りそうだ