星の輝く夜空の下で


「夏芽…かぁ」


星夜は屋上でため息をついた
夏芽の事を素直に名前で呼べないことが引っ掛かってた
記憶が戻りかけたことなんてすっかり忘れてた


「あいつだって俺のこと名前で呼ばねぇんだから、気にすること無いじゃんかな!!どうしたんだよ俺」


すると屋上の扉が開く音がした
星夜は見えるはずがないのにとっさに隠れてしまった
しかし会話はしっかり聞いていた


先に聞こえたのは男の声だった
多分、学生だろう


「ごめんな、急に呼び出して」

「平気だけど…」


次の声は女だった
こっちも多分学生


「俺のこと分かる?」

「いや、全然」

「同じクラスなんだけど」

「あ、そうなんだ」


同じクラスなの知らなかったのかよ
つーか気づかなくてごめんとかいえよ
気が利かねぇ女だなと思わず心の中で星夜はツッコんだ


「あはは、だよね。そんな感じだと思った」


男はどうやら気にしてないようだ


「じゃあ、これから知ってほしい」


なんとなく星夜はドキッとした


「俺、浅岡さんのこと好きだから」


告白だと分かった星夜はもう最後まで話を聞かずにはいられなかった


「いつも窓の外に顔を向けて電話してる姿に見とれてた。元ヤンって噂が流れてたけど気にならなかった。前はそれくらいの気持ちだった。でも今は違う。柚木と話すときだけ笑う浅岡さんを見て、俺にもあんな風に笑ってほしいって思った。でも浅岡さん俺のこと知らないだろうから柚木に仲を取り持ってくれって言ったんだけど、自分でやれって断られた。だから告白することにした。友達からでいいから仲良くしてください」


星夜は男の言葉にぐっと惹かれた
心の底から男を応援した


「名前は?」

「え?」


馬鹿野郎!!
そこはよろしくお願いしますだろ!!
と星夜は壁を殴ったり蹴ったりした


「名前。あたし君のこと知らないから」

「あぁ、ごめん。辻本太陽(ツジモトタイヨウ)」

「つじもとたいよう…」

「うん、よろしく」


辻本はそのまま屋上から出てった
星夜はこっそり覗いた
するとそこにいたのは夏芽だった


「夏芽?」


星夜は思わず声が漏れた
夏芽は声に気づき星夜を見つけた
星夜は口をふさいだ


「あんた盗み聞きしてたの!?」

「ちげー!!寝てたらお前らが来たんじゃい!!」

「聞いてたんだ全部」

「…おぅバッチリな」


いつもみたいに刃向かって来ない夏芽


「お前、そんな性格で告白とかされるんだな」

「…」

「おい、聞いてんのかよ?」

「…付き合ってみようかな?」


星夜は驚いた
フるもんだと思っていたから


「今まで告白されても興味なかったけど、新しいあたしになってみようかな?どう思う?」


星夜は見つめられて顔を背けた


「それはそれでありだと思うけど名前も知らなかったのにいきなり付き合うって高度な技だと思う。せっかく友達から始めようっていってくれてんだから焦らず友達から始めたら…」


振り返ったとき夏芽はもういなかった


「人の話は最後まで聞けよ!!」


誰にも届かない声だった


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