ある小説家の苦悩
尋常じゃなく喉が渇いていたので、席に着くのと同時にオレンジジュースを頼んだ。


しばらくして、それらしき人物が目の前に現れる。


「あの~ヤマモト先生ですよねぇ……?」


……正直、とても驚いた。


毛先を丸めた、長くて茶色の髪。

完璧な手順で施したと思われる、芸術的なそのメイク。

体を隠したいのか見せたいのか判断に迷うような、面積の少ない洋服。

いわゆる、「今時のお嬢さん」が目の前に立っていたのだ。


大学生とは聞いていた。

しかし、小説を書いているくらいだから、もう少し、こう、大人しい感じの「文学少女」という雰囲気の娘さんだと思っていたのだ。


度肝を抜かれていると、彼女はキャハッと笑いながら向かいの席に腰掛けた。

「はじめましてー!サイトウっていいます♪やだー!チョー感動!!ホントに会ってくれるとは思わなかったょー!!」


……ポテンシャルが高い…。

かなり苦手なタイプだ…。

本当にこんな人が小説を…?
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