あの空の音を、君に。
そんな私に転機が訪れた。
いつものようにひとりでボーっとしていた休み時間だった。
「――まさん。み――さん」
誰か、名前呼ばれてるよ。
早く答えてあげてよ。
一人でそんなことを考えていたんだけど――――
「深山さん」
自分の名前が呼ばれていることに気づいたのは、それから数秒たってからだった。
振り返ると、クラスメートの女子が立っていた。
確か、青木優花(あおきゆか)さん。
「な…にか?」
「ごめん、私、昨日間違えて持って帰っちゃったみたいで」
そう言って、青木さんは水色のノートを差し出した。
その表紙には、『深山涼』の文字。