あの空の音を、君に。



「優花……」

「ん?」



優花が爪をいじるのをやめ、ケータイをいじっていた。



「伊月って、落ち込んでたの?」

「うん。あれ。知らなかった?」



私が小さく「うん」とうなずく。

その姿に優花はもともと丸い目をもっとまん丸にした。



「だって、ケンカしたって伊月言ってたよ?」



優花がケータイを閉じ、私の目を見つめた。



あれは、ケンカなのかな?



ううん。

あれはケンカなんかじゃない。



それに、どっちかと言えば伊月が落ち込むより、私の方が落ち込んでいたし。


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