あの空の音を、君に。



まだ吹奏楽が楽しかった頃、私と里麻はよく立ち入り禁止の屋上に行って、それぞれの楽器を空に向かって響き渡らせてた。


たまに、あいつも入ってくることもあった。


あのときが、一番楽しかった。



はぁーあ。


大きなため息をつく。



気を紛らわすため、さっき消したテレビをもう一度つけた。


さっきは天気予報のお姉さんがしゃべっていたけど、もう料理のコーナーに入っていた。



料理名を見て、おいしそうだなと思った。



ふと、視界の中に折り畳まれた新聞が目に入った。



私はそれに、無意識のうちに手をのばしていた。


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