あの空の音を、君に。
「……ごめんな」
寂しそうに伊月が謝るから、私も悲しくなってしまう。
力なく首をふると、伊月はポケットから手を出した。
それから、伊月はきれいな細い指を自分の耳の中に入れた。
それから、なにやら小さいものを取り出した。
「それって――」
「補聴器」
伊月はそれをタオルの上に置いた。
あの日見た大豆みたいなものだった。
「あの日、あの衝撃で階段に落ちちゃったの?」
「うん。だから、返事も曖昧だったろ? ごめんな」
予想通りだった。
あの返事の遅さは、私が伊月を押し倒したときの衝撃が原因だったんだ。