あの空の音を、君に。
俺達が吹いたのはシェルドンの「イベリアの冒険」。
きいたことがない人は、ぜひきいてほしい。
イベリアはスペインの別称とも言うから、この曲はスペインの激しいフラメンコを連想させる。
第一部のフラメンコ風のきらびやかな音楽とは一変、第二部は静かでロマンチックな音楽に変わる。
第二部はアルトサックスソロで始まる。
俺のサックスの音がCDデッキから響いてきた。
たっぷりと息を、ビブラートをしっかり。
いつも心がけていたことを頭に思い浮かべたときだった。
急に音が小さくなった。
こんな急激なデクレッシェンドは楽譜に指示されていなかったし、本番でもこんな風に吹いた覚えがない。
驚いて顔を上げると、みんなは耳をすませて曲を聞き流していた。
CDデッキの近くに座る顧問も、何事もなかったのように座っていた。