あの空の音を、君に。



昼休みの屋上での出来事を思い出して、唇を手の甲で拭う。



初めてだったのに。



「何があったんだ? 海から柚木(ゆずき)をぶった、とは聞いたけど」



伊月の言葉に足を止めた。


私の頭上では、雨がテンポよく傘にリズムを刻んでいる。



「――知り合いなの?」

「まぁね。放課後涼迎えに行く前に海と会って、隣に右頬が若干赤くなってる人いたから、海にきいてみた」



そんなこときいたなんて。


暴力的な女子、って伊月や海くんにも思われたんだろうな。



「2人、幼なじみなんだってな」



伊月が、私たちの関係をどこまで知っているのか心配になった。


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