あの空の音を、君に。
「涼は間違ってる」
流星の声が目の前の背中から響いてきた。
「岡村が涼のために吹かないわけねぇだろ」
「だって伊月、もう耳聞こえないじゃない」
「お前は難聴なんかに負ける程度の存在だったのか?」
病院の建物が見えた。
少し自転車のスピードがあがった。
「支えるって決めたなら最後まで支えきれ。彼女だろ、お前」
支える。
今の私にできることは、伊月を支えること。
「うん」と私が言うと同時に、自転車が病院の敷地内に入っていった。
「ありがと。流星」
「別に。また後で俺も行く」
恥ずかしそうに髪の毛を犬みたいにブルブルと振った。
照れ隠ししてる。
ガキみたい。
そんな流星に小さくお礼を言い、私は自転車から降りて病院の入り口である自動ドアをめがけて走り出した。