あの空の音を、君に。



目の前で、信じられないというような表情をしながらも、優しくほほえんでいる伊月。


この伊月は――。




「声、聞こえる?」


「聞こえるよ」




少し返事が遅れたものの、ちゃんと答えてくれてほっとした。

私がほっとしたのがわかったのか、前みたいに私の髪の毛をくしゃっとなでた。



「でも――」

「あなたが涼ちゃん?」


伊月の言葉が遮られた。


言葉を発したのは、お母さんらしき人。



「――はい」

「伊月の母です。あなたに会いたかったわ」




そうやってニコッと微笑む伊月のお母さん。


でも、その笑顔に希望の光はなかった。


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